ワイシャツの黄ばみ取り

寒くなってきましたね。
クリーニング業界もワイシャツの量が1/3になるなど多大な影響を受けていますが、家庭洗いでのワイシャツで黄色くなってしまったというケースが増えています。
さらに寒くなってくると、汗もあまり出ないので毎日洗っていたシャツも2日に1回とか洗う回数も減る傾向にありますのでクリーニングに出す回数も減る傾向にあります。
しかし、冬の汗には皮脂が多く含まれていて、洗っても夏の汗よりも取れにくいんです。
今回は、ワイシャツの黄ばみ取りをご紹介いたします。
ワイシャツの黄ばみについて
家庭洗いをしていると、どうしても黄色くなってしまう襟の汚れ。
何故なのでしょう?
それは、襟の汚れが取り切れていないからに他なりません。
常温で洗っていることと、襟の汚れの洗う前の処理が足りないからです。
冬の水温は低くて汚れが落ちにくいのもありますが、水では落ちにくい皮脂が黄ばみに大きく影響しています。
脂は、酸化すると黄色く変色していきます。さらに、時間が経過すると脂が固くなって汚れが取れにくくなるんです。
汚れの主成分
襟の主な汚れの主成分は、汗、脂質、たんぱく質、垢などによるものです。
これらは、体温で溶けた状態で生地に付着しますので、体温より高い温度でやっと溶けやすくなり、界面活性剤、酵素、漂白剤の酸素の力などを利用して分解させて取り除きます。
そのため、クリーニング店では温度を加えた温水洗いをしています。
家庭でも洗いの時だけ風呂の残り湯などで洗うと汚れが取れやすくなりますね。それを綺麗なお湯で洗っているから落ちるんです。
では、なぜクリーニング店では黄色くなるお店と黄色くならないお店があるのでしょう?
黄ばみの主成分が取れていないのは、洗いの他に、「前処理」や「手間をかける作業」のどれかが足りないからなんです。
昔のクリーニング
昔(今もやっている店もあります)は、ササラという竹のブラシで襟や袖などを洗剤(界面活性剤)を付けて擦ってから洗っていました。
戦後からバブル当初までは、ポリエステル100%のワイシャツが主流で、汚れるとなかなか取れない素材でした。帝人のテトロンや他メーカーのポリエステル素材で作られたワイシャツは丈夫ですが、襟汚れが落ちにくい特徴もありました。
1枚1枚ササラで擦るので丁寧に感じます。ポリエステル100%だと丈夫なので、繊維の中に絡みついた汚れは物理的な力を加えると取れやすくなるのです。
しかし、現在は綿と混紡のワイシャツがほとんどで、擦ると綿生地が傷んでしまい、薄くなったり破れやすくなります。(首と襟生地は、摩擦で自然に生地が薄くなりますが、さらに擦ることで劣化が加速していまいます)
物理的な力を加えるとすれば、超音波ガンで細な振動を加える方法や、しみ抜きガンで微細な粒子を勢いよく吹き付けたりすることで、物理的な作用を加えます。(しみ抜きの道具ですが前処理にも有効です。)
昭和50年くらいまでは、仕上げは手仕上げや、平プレス(平面プレス)が一般的でした。
今のクリーニング
今は、どれだけ綺麗にするかを考えるクリーニング店であれば、襟や袖口の前処理は行っていると思います。
綿や混紡の生地が多い現在ではササラは使わず、界面活性剤や酵素、漂白剤などを使用して汚れを落としています。
ただ、安さを謳っているお店では1枚1枚を丁寧に前処理するのはコストがかかりますね。
コスト削減のために手間をかけることは出来ないかもしれません。
店舗展開している大手さんの多くは、ワイシャツの1回の洗いの数量も多いですので、ワイシャツが絡まないように、10~15枚くらいを束にして真ん中をマジックテープの付いた紐で括り、50Kgくらいの洗濯機で200枚ほど入れて洗います。洗濯機の叩き効果と洗剤で汚れを落とす感じですね。
1店舗で個人店は、一回に40枚くらいの洗いが多いですので束にする必要はなく、絡まずに洗える量なので叩き洗いともみ洗いの効果もあります。
1枚1枚にかける時間は前処理やしみ抜き、仕上のこだわりなどで大きく違うので、料金の差も出てきます。
クリーニング店の洗濯機は、ステンレス製のドラム式ですので、家庭用の洗濯機のドラムの大きさと比べると、プロ用は同じKgであってもドラムが大きいですので、叩き洗いでの汚れは落ちやすくなります。
さらに、スチームで温水にするために毎回綺麗なお湯で洗います。
洗う温度も、洗いから濯ぎ工程で少しづつ下げていくことでしわの発生も抑制しています。(急な温度変化があるとしわが固定してしまいます)
現在の仕上げ工程は、立体型の人体型プレス機が一般的となり、個人店にも多く普及しています。
かなりワイシャツが濡れた状態で仕上げるため、乾きによるしわを発生させずに素早くプレスと熱風で乾燥していきます。
私が以前勤めていたワイシャツ仕上機メーカーは、日本やアメリカでのシェアも1番です。
手仕上げをしなくても、機械だけでの仕上げで十分に綺麗に仕上がるようになってきています。
仕上には一番時間がかかりますので、人件費のコストを抑えられているためワイシャツのお値段は安く抑えられています。
当店のワイシャツクリーニング
当店は、個人店ですので大手さんとも個人他店とも差別化に取り組んでおります。
それは、汚れ落ちを良くすることと、通常に洗うだけでも大抵の汚れは落ちるようにすること、仕上へのこだわりです。
あまりに黄ばみが強い古い汚れについては、しみ抜きをして部分的に強い漂白をする必要があり別料金になりますが、
毎日着るワイシャツですから、そんなにコストを掛けたくないというのが、一般的な消費者の意見でもありますので、通常洗いで落ちる範囲を広くしています。
①受付けするときの点検で、お客様と一緒に汚れの確認としみ抜きの有無や汚れ具合の確認、ボタン取れ欠けの確認をします。
色の出やすいワイシャツは、色ワイシャツとして50円プラスさせていただいております。(通常とは別洗いをしています。)
②受付けでは、確認出来きれなかった汚れの確認やボタン取れ、ポケットの確認をして、ポケットの中を掃除をしてタグ付けをします。
③襟、袖、前身ごろの汚れの確認をしながら、前処理の1段階として襟、袖、食べこぼし、血液などを確認しながらそれぞれに合った界面活性剤を塗ったり、しみ抜きをしていきます。
④黄ばんでしまったり、シミの付いたワイシャツは、汚れのある部分だけを温水に漂白剤を足した液に漬けこみます。時間は長くても生地が弱ってしまったり、酸素による効果が薄れてしまうため適した時間だけ漬けます。
⑤それでも、取れない黄ばみは、しみ抜きガンなどで物理的な力を加えて黒ずみや黄ばみを取り除いていきます。(通常より手間をかけるため、ここで初めてしみ抜き代が発生します。)
⑥前処理をしたワイシャツは、ドラム式の14kgの洗濯機で洗います。
洗剤は酵素入りの洗剤を使用し、温度を40度に設定して汚れを分解しながら洗います。
最後の濯ぎに入れる糊は天然のタピオカ糊を使用し、抗菌剤を平準剤を加えて滑りをよくします。
⑦絞りを1分に甘絞りをしたワイシャツは、綿100%とポリエステル混紡の素材、半袖や長袖などで分けます。
襟袖を同じ方向に揃えて、仕上をやりやすいように準備をします。
⑧仕上げをします。
最新型の襟・袖の芯の縮みを延ばす、カラーカフス仕上機で襟と袖口をプレスして仕上げます。
最新型の人体型プレス機に丁寧にワイシャツを着せて、プレスと熱風で仕上げます。
立体ワイシャツはハンガーに掛けてこれで完成です。(多少の手直しは平プレスやアイロンでしております)
たたみは、少し手直しをしてたたみ機でたたんで行きます。
⑨ハンガーに掛けたり、たたんだワイシャツをほこりなどを防止するためにビニール包装をします。
包装をしながら、シワやシミが残っていないかを点検します。(仕上時と作業者は別にしています)
何か気になる点があったら、お客様にご連絡用のメモを記載したり、再洗いや仕上直しをします。
⑩タグの番号に合わせて、見出しシールを貼って、番号順に揃えてお客様ごとにまとめてハンガーレールに掛けます。
⑪お客様の引き取り時に、タグ付けや包装時に気になった点、シミの取れ具合、修理点などを一緒に確認をしてからお渡しとなります。
⑫ボタン付けやしみ抜きの再依頼などがありましたら、この時点でもう一度受付けをして再度お時間をいただいてお渡しとなります。
注意点として
ポリエステル素材の黄ばみは、完全に変色している場合があり、取れないシミもございます。
綿や天然素材の方が付いた汚れは取りやすくなります。
また、糊は、汚れが付着するため糊と一緒に洗いで汚れが取れやすくなる意味もあり、天然糊の糊付けはおすすめします。
人工糊は、繊維に残留することがあり、だんだんと固くなるため、当店では天然糊にこだわっております。
糊付けは、薄糊、糊無し、強糊を選べます。(+50円)
BEAMSの襟の汚れ
画像では見ずらいですが、だいぶ黄ばみがあります。
襟汚れをしみ抜きして黄ばみを取り、洗いました。
家庭洗いで襟が広範囲に黄ばんでしまったワイシャツです。

しみ抜きをしてから洗いました。
黄ばみが綺麗に落ちました。

染み抜きは、150円~500円程度です。
全体に黄ばんでしまったワイシャツの場合は、復元加工として̟̟洗い代込みで500円程度になります。
色ワイシャツの場合は色が抜けやすいため、漂白が出来ないため「ダブル洗い」(ドライクリーニング+温水洗い)をおすすめしております。漂白で色が抜けるワイシャツは、黄ばみが取れない可能性があります。
マルエイクリーニング
前田俊雄
この記事を書いた人

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